Gatos Apartment代表の木津イチロウと申します。

一緒に写っているウーが私の人生を一変させてくれました。十数年レコード会社でディレクターの仕事に就いた後、KDDI㈱へ転職、LISMOという着うたフルのサービスを世に広める仕事をしていました。普通のサラリーマンとして生活をしていたある日、親猫のチーが目の見えないウーを連れてやってきたのです。まるで「この子を助けて!」と言っているかのように。詳しい話しは「Gatos Apartmentとは?」をご覧頂くとして、当時住んでいたペット不可の賃貸に計5匹の野良猫を匿わなければならない状況になってしまいました。流石に良心が咎めた私はペット可賃貸への引越しを決意、ところが探せどペット可物件が見つかりません。さらに賃貸市場における「ペット」とは「犬」のことを指していることに気付きました。複数の猫と快適に住める賃貸が世の中に皆無だったことから、であれば自分の理想とする猫専用賃貸を作ってしまえ、と試行錯誤しながら世界初の猫専用賃貸を作りました。それがGatos Apartmentの始まりです。

Gatos Aptの特徴〜独自の視線

Gatos Apartment竣工から7年経った今、喜ばしいことに全国にチラホラと猫専用、猫共生を標榜する賃貸が増えて来ています。そうした賃貸物件を拝見させていただくと、一番の目玉は大掛かりなキャットウォークだったり、猫カフェを模したものであることがほとんど。多くの猫専用賃貸は「お猫様ファースト」で考えられた物件が多いという印象を抱いています。私が監修する物件は100%全て「人間ファースト」で考えています。それに私自身が猫カフェみたいなところに住みたくないから、というのも大きな理由です。経験上、キャットウォークは実際に猫が使うかどうか分からないことも知っています。老猫はジャンプする気力がなかったり、若い猫も最初は好奇心で遊んだけど数ヶ月で飽きてしまったなど、猫が積極的に「そこに行きたい!」と思うようなゴールとセットになったキャットウォークでないと意味が大幅になくなってしまうのです。

Gatos Aptを筆頭に、Gatos Aptが監修した物件で行なっている猫と人が快適に住むための工夫として、私がこだわっているポイントが4つあります。

ポイントその1 猫トイレの置き場所を水回りに複数、無理なく設置できるスペースを確保する

私が監修する物件は「完全室内飼いにする」ことを絶対条件にしています。そうすると猫たちは必然的に室内でウンチ・オシッコをすることになります。一般的に猫トイレは飼育頭数+1個設置すると良いと言われています。2匹飼っていたら3個の猫トイレが必要な訳です。でも、賃貸で猫トイレをまとめておくスペースがあるような部屋は、現在の日本の賃貸事情を見るとほぼ不可能です。そこで多くの方が寝室、リビングに、廊下に1つずつなど、苦心して置かれています。水回り(洗面室と人間用トイレ)にトイレを集中して置くことが出来ると、こんなメリットがあります。

  1. 換気扇があるので匂いを気にしなくて良い。
  2. (人間用トイレが側にあれば)猫のウンチを人間用トイレに流すことができる。
  3. 猫トイレを容易にお湯洗いすることができる。

かさばる猫砂やトイレマットなどを猫トイレと同じ場所に収納できるようにしてあるので、猫トイレを丸洗いした後、すぐにセットすることができます。人間の目に付きやすい場所に設置しているので、猫のウンチを直ぐに処理することができ、猫トイレを常に綺麗な状態に保つことが容易になり、結果的に猫が快適、という仕組みなのです。

ポイントその2 猫脱出防止扉の設置

宅配便の配達時や来客時など、玄関ドアの横から猫が脱走することを防ぐため、居室と玄関をつなぐ通路に猫脱出防止用の扉を設置しています。保護したばかりの野良猫や好奇心旺盛な猫がいる場合には有効です。が、実は大半の猫たちには不要の設備だったりします。何故なら猫は臆病で脱兎のごとく逃げ出すことは稀だからです。上の写真の様にわざと玄関ホールを大きく取り、クローゼットを設けるなど人間のエスケープゾーンとして有効活用しています。お出かけの時は、猫に触られたくないもの、毛だらけにされたくないものを置いておくスペースとして有効活用できるのです。

ポイントその3 猫が3次元に動ける工夫

猫は犬と違って上下に動きたい動物です。Gatos Apt監修物件では、キャットウォークを付けたり、天井高を上げたり、ロフト付き、2階・3階建てにするなどの工夫をしています。限られたスペースを有効活用し、室内飼いの猫たちが運動できるための工夫です。Gatos Apt監修物件では、キャットウォークの設置方法と場所にもこだわりがあります。

キャットウォークは陽の当たる、外が見える場所に

猫は歳を取るほどあまり動かなくなります。少しでも運動して、いつまでも健康でいて欲しいと願うのが飼い主と言うもの、そこでGatos Aptでは「猫が積極的に行きたい」と思える場所にキャットウォークを設置しています。それは、こういう場所です。

  1. 陽の当たる場所
  2. 風が通る場所
  3. 外を見ることができる場所
  4. 人の手が(容易に)届かない場所

こういう場所に作れば、猫はそこが快適であることを知っているので「よし、あそこに行くか」と積極的に行ってくれるようになるのです。

キャットウォークは最後の所だけ用意する

「ウチの子は老猫だからキャットウォークを使わなくて」「臆病だから」という声を良く聞きます。一緒に住む猫もそれぞれ。ですので、Gatos Apt監修物件では最初から最後まで懇切丁寧なキャットウォークを用意していません。体力がなければご自身で緩やかな段差になるようにブックシェルフやカラーボックスを用意する、お気に入りのキャットツリーを設置するなど、入居者さんがご自身の猫の特性に合わせた動線をご自身で用意しましょうという考えです。

ポイントその4 外に出られる工夫をする

「少しでも愛する我が猫に外の雰囲気を味わってもらいたい」という願いを叶えるべく、Gatos Apt監修物件の多くで、安全にベランダに出られる工夫をしています。1階の部屋には約2mの塀を隙間なく設置しています。猫は臆病な動物ゆえ、ほとんどの場合、自ら2mの塀を飛び越えることはしません。それでも心配な場合は、外に出すときは様子を見ながら、時にはネットを貼るなど自衛して利用していただいています。2階以上の場合、ベランダの手すりに「猫返し」を設置、不慮の事故で猫が転落することを防ぐようにしています。(※全物件にベランダなど外に出せる工夫がある訳ではありません。)

日本全国に猫専用賃貸を増やし、不幸な猫を減らしたい

Gatos Aptの経営を開始して日本全国から「どうやって作れば良いのか教えて欲しい」というご要望を多数いただき、これまでに4棟の猫専用賃貸を監修させていただきました。現在もいくつかのプロジェクトが同時進行中です。こうした地味な工夫を地道に実践し、コツコツと猫専用賃貸を増やしています。見た目の派手さだけではなく、本当の意味で猫と人が快適に住める住宅を提供できてこそ、安心して猫を飼うことが出来ると思っているのです。住みやすさに気付き、猫と一緒に暮らそうと決意してくれた時、すでに飼われている猫たちは勿論、野良猫や保護猫の貰い手が一人でも多く産まれてくれれば、との思いで日々活動をしています。

Gatos Apartment代表 猫専用賃貸コンサルタント

木津イチロウ


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