【大家さん向け集中講座:イントロ】それでも「普通」の賃貸を作りますか?

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あなたのご近所に、こんな感じの新築アパートがアッという間に建ってたりしませんか?

 

ここ1、2年で新築のアパートが増えたと思いませんか?街を歩いたり車を運転していると、古い建物が取り壊され、更地となり、あっという間にアパートが出来上がる光景を良く目にします。理由は幾つかの要素が積み重なった結果だと考えます。大まかにはこうした要因と考えます。

 

  1. 相続税対策
  2. 建て替えタイミングとの合致
  3. 節税対策
  4. 消費税率引き上げ前に着工した
  5. 銀行金利の引き下げ
  6. 投資対象として

 

上に挙げた要素は次元の異なるものが含まれるので分かりづらいかもしれませんが、例えばこんな感じです。「今はサラリーマンだが、将来のために資産を作りたいのでアパートを経営しよう。住宅ローン金利も下がっているし、消費税増税が上がる前に何とかしよう。」とか「親父の遺してくれたこの土地、もう60歳の我々夫婦2人だけで暮らすには広すぎる。固定資産税も馬鹿にならないし、土地の半分にアパートを建てて節税しよう。」とか。背景は様々なれど「何とかしなければ」と思っていた層にとって好要素が揃ったため、というのが真相ではないかと思います。

 

80年代のバブル、再び。(ある意味)

もう一つ、重要かつ大きな要因があるのではないかと。それが1980年代のバブル。この時期、バカみたいに土地価格が上昇、億ションと呼ばれた賃貸が右から左へ飛ぶように売れました。「この波に乗らなくちゃ!」と、多くの方々が飛びついた先、それが不動産投資です。大なり小なり、首都圏を中心に賃貸が乱立しましたが、40年近く経った現在、当時のオーナーから子供世代へ相続され、古くなってきたので店子も入らず、そのままにしておいてもしょうがないので、リフォームしよう!建替えよう!という方々が結構多いのではないかと思うのです。実際、私の元へご相談に訪れる方々の1/3は、こういう方々。

2016年現在、世代交代・新規参入が入り混じり、不動産業界はかつてのバブルを彷彿とさせる状況になっています。全員が「いつか弾けるよね。(と言うか、もうすぐだよね。)」と、確信しながら・・・。

 

どういう層が賃貸物件を所有しているのか?

現在の日本において、一番資産を保有しているのは高齢者層です。例えば80歳代の世代が亡くなった際の資産相続は、子供世代に受け継がれます。その世代の多くが60歳代。つまり、多くの家庭で「資産は高齢者の中だけで廻っている」状態なのです。

こうした層が賃貸経営に乗り出そうとすると何が起きるでしょうか。想像するにこんな感じではないかと。

「年金以外の収入源を確保したいのでアパートを建てようと思う。外観やインテリア、それに設備はどうしたら良いのだろう?自分は歳だし、センスもない。これから勉強するのも億劫。まとめて面倒を見てくれるところに全部任せよう。CMを打ってるような大手企業だったら安心だ。」

こうして大手ホームメーカーが建てる賃貸がまた一つ増えて行く訳です。大手ホームメーカーは、スケールメリットを活かした部材の大量発注によるコスト削減を行います。大量発注したモノを捌くため、自ずとパターンが出来上がります。つまり自由設計とは言いつつ、物凄い制限と制約の中で作って行かざるを得ないのです。某大手ホームメーカーに一任された物件の監修をした際、私が最も驚いたことは、ミーティング回数の少なさです。ホームメーカー側から提示されたロードマップには、最初のプランが提示されてから着工までに行われる打合せが、2ヶ月間で5回でした。

Gatos Aptは、最初のプランから着工まで週1回のミーティングを半年以上続けました。回数にして30回前後。ホームメーカーでの施工は安くできる理由がここにあります。「パターン化による経費削減」です。本来、家を建てることは非常に手間のかかる大変な作業の連続です。それをパターン化することで、あらゆる面において人件費の削減と時間短縮を実現することができます。こうして、全てにおいて及第点で、無難な間取り、設備、外観の賃貸住宅が世に溢れることになります。

 

20㎠前後のワンルームが大量発生する理由

これは極端ながら、こんな監獄みたいな部屋を増やして、どうしたいんですかね・・・。

 

何故、世の中には20㎡前後のワンルームばかりなのでしょうか?それは、これが賃貸経営の「王道パターン」だから、です。ホームメーカーや施工する側からすれば、1部屋でも多く作ってもらいたいのです。部屋が増えれば納入する設備類も増え、総工費が上がるからです。大量発注した在庫を捌けさせるチャンスでもあります。なので営業マンはこういうセールトークで口説くのです。「お客様の土地は60㎠まで建てられるので、家賃の高い30㎠の部屋を2部屋作るより、20㎠の部屋を3部屋作った方が空室のリスクヘッジが出来てお勧めですよ。」と。施主側は大手メーカーのセールスマンが言うのだから間違いないだろうと、この意見を鵜呑みにし、その建物を見た人が参考にして同じタイプの部屋を真似して作る。この循環を80年代からずーっと行っているのです。その結果、築古から新築まで同じ間取り、広さの賃貸物件が大量生産されました。

Twitterを中心に「クソ物件オブザイヤー」という、「クソ物件」(失礼。笑)を紹介したハッシュタグが話題になっています。2016年の現在に、こういう物件を作ろうとしている方は今すぐ、賃貸プランを考え直すことをお勧めします。もう「クソ物件」認定されてますからね、こういうお部屋。

 

新築の空室率30%超!空前の空室率ブーム到来中

総務省の「住宅・土地統計調査」によると、賃貸住宅の空室率は、東京19%、神奈川21.5%、千葉24.9%、埼玉22.7%です。人口が集中する東京はもっと詳細に見ると、人気の場所なら下がりますが、それでもせいぜい16%というところ。逆に言うと不人気な土地では40%なんて土地もあるのです。「古くて不便な物件が空いてるんでしょ?」それはある意味、その通り。同じ間取りなら駅から近くて新しい所に住みたいと思うもの。では新築賃貸物件の空室率を見てみましょう。東京33.68%、神奈川35.54%、千葉34.12%。これは不動産調査会社「タス」が発表した2016年3月のデータです。完全に需要と共有のバランスが崩壊していることがお分かりになるかと思います。コンサルにお越しになる方の中には「新築の内は入居者に困らないけど、古くなっても価値を維持したい。」とおっしゃる方がいますが、甘いです。2016年現在、人口が集中する東京ですら「新築の空室率は30%以上」なのですから。

但し、実はこのデータの信ぴょう性に関して、私はかなり懐疑的なことも記しておきます。と言うのも「何を持って空室とするか?」という定義が明文化されていないデータだから、です。個人的にはオープンから半年以上経っても空室の場合は「空室」とカウントするのが妥当かと思っています。

 

異常な賃貸住宅着工件数

昨年、2015年の貸家着工件数は、38万3678戸。(国交省調べ)これは前年比7.1%増。今年は連続増加中で、4月は前年同月比で20.1%の大幅増。ちなみに「持ち家」の前年同月比は-7.9%の大幅減。いかに賃貸住宅が「異常なバブル状態」であるか実感できる数字です。

ホームメーカー施工の特徴の一つに「工期が早い」という特徴があります。更地になったと思ったら、あっという間に建物が建っていた光景を目にしませんか?着工から完成まで4ヶ月程度がデフォルトです。施主側からすれば、工事が早く終われば、それだけ早く商売を初められる、工事費を抑えることができる、と良いことずくめ。この異常な賃貸住宅着工数を考えると、短期間で新築の、同じような間取り・設備の賃貸がどんどん増殖し、これからもどんどん増殖して行く、ということです。これから大家さん稼業を始めようと思っている方は、この事実を真剣に考えるべきだと思うのです。

 

こういう大家さんに、欠けているもの

これから、新築なりリフォームなりで20㎡前後のワンルームを作ろうとしている大家さんに欠けているもので最も致命的なのが「マーケティング力」でしょう。自分の物件より条件の良い物件がポコポコと産まれ続ける状況において、あなたの物件は「誰の、何のための物件」なのか、自問してみてください。「大学生が通学しやすい部屋を提供するため」、「サラリーマンが通勤しやすい部屋を提供するため」など具体的なイメージです。その理想を実現するためには20㎡ワンルームで大丈夫ですか?同業他社には条件面で見劣りせず充分な競争ポテンシャルを保てますか?「大丈夫!」なのであれば、そのまま現在のプランを推し進めて頂ければ良いと思います。が、「自信なくなってきた・・・」という方、ご自身の物件周辺のマーケティング調査と、戦略の組み立てを早急に行ってください。今からなら間に合います。多分・・・。

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